皮革ペディア
目次
はじめに
皮革・毛皮は、もっとも古い生活用品です。
しかし、皮革・毛皮を日常生活の中に多く入り込んでいる私たちは、取扱い方法やお手入れといった知識が十分ではありません。
昔から皮革製品は日頃のお手入れ次第で、半永久的な素材と言われていました。
近年、皮革・毛皮製品が実用性のアイテムからファッション性の高いアイテムへと変化を遂げています。
皮革・毛皮製品は、消費者の志向を反映し薄くデリケートになり、部位の性質を考慮されていない製品が増えてきました。そのため、ワンシーズンでトラブルが生じる事も珍しく無く、色止め(堅ろう度)の低下やナメシ不足によるトラブルも生じています。
インナーなど他の衣類への色移り、革衣類を軽くするあまり、うすく加工され袖を通した際、破れたり縫い目から裂けたといったトラブルも増えています。
また、トラブルだけでなく被害も増加傾向にあります。
人工皮革の製造技術が向上している事から、皮革製品と思い購入したアイテムが人工皮革であった例も珍しくありません。
流通しているアイテムでも、品質表示タグには牛革と明記されているにもかかわらず、実際は人工皮革が使用されている例も実在します。
これは、製造・販売のメーカーに皮革に対する知識の低下が懸念されますが、人工皮革は比較的安価なこともあり、意図的に販売しているメーカーも残念ではありますが存在します。
皮革製品を販売される方、あるいは皮革製品を購入される方に上記のようなトラブルや被害がなくなる為には一定の知識が必要不可欠になってきました。
最近の皮革には、安価なものから高級な物まで幅広く存在し、価格の違いは、入手が困難な皮革であったり、生き物の種類・ナメシ方法・着色方法などさまざまな観点から決まっています。
「皮革・毛皮製品は高級素材」、「皮革・毛皮製品は扱いが難しい」といった固定観念をなくし、適正に皮革・毛皮に対する判断ができ、気軽に皮革・毛皮を楽しめるように、皮革・毛皮専門のテキストを製作しました。
また、このテキストが皮革・毛皮製品に興味がある方にも興味深いものになれば幸いです。
皮革(革)とは
一般的に「かわ」と呼んでいますが、ここでは皮革と表現します。
人間は肉を食べますが、皮革はその副産物でもあります。
動物を中心とした生き物の皮膚に防腐処理を施したものを原皮といい原皮をナメシ・脱毛を行い製品化したものを皮革と呼びます。ナメシの際、使用する薬剤をナメシ剤と言いますが、何百種類ものナメシ剤が存在します。皮革は人の肌と同じくたんぱく質(コラーゲン)が主成分ということもあり基本的に無臭です。一般的に皮革のニオイと言われるのは、主にナメシ剤のニオイになります。
また素材の分類の際、綿・シルク・ポリエステルなどのように皮革も単に革として区分されますが、動物の種類・性別・年齢・飼育環境・なめし・仕上げなどいろんな性質の皮革が存在します。
皮革と一括りに出来ないほど、いろんな性質、種類があります。したがって、お手入れの方法も同じ方法ではなく、皮革の性質・種類に合わせたお手入れ方法が必要とされています。
皮革は、人の肌と同じく年齢が若いほど皮が薄く、表面に生態時の傷が少なく肌触りがよい貴重な素材になります。
皮革の性質として、「革の部位」という言葉を耳にされたことがあると思いますが、たとえば肩や背中などの革は繊維が密であり耐久性に優れていますので、革衣類を製作する際は、耐久性が必要な主に肩や背中に使用され、バッグの場合は、底の四隅やベルトなどの負荷のかかる部分に使用されることがあります。これに対し、腹部などの部位は、繊維が荒く脂肪(油分)が多く含まれるため耐久性より伸縮性に優れます。
革衣類の場合、負荷のかからない肌触りを求められるポケットなどに用いられることが多くあります。腹部など、脂肪が多く含まれている部位は、経年使用により少しずつ脂肪(油分)が抜けてきますので、その部分の組織が空洞化し、しわが目立ってくることがあります。
特性として皮革は外的要素(衝撃など)から体を守ったり、寒い季節、体温の保温効果など人を守る素材でした。しかし近年では靴やバッグなどを中心に、ファッション志向が強くなりワンポイントとしての役割も担っています。
皮革の成分はタンパク質が主成分であり、油分と水分のバランス(潤い)が大切となってきます。油分と水分のバランスが保たれていれば、皮革として永く使用することが出来きます。
油分の含有量が極端に低下したり、あるいは極端に含まれたり、水分が極端に低下したりまたは含まれたりとバランスが崩れた場合、皮革本来の伸縮性が損なわれ皮革自体が硬くなり症状が進行するとひび割れを起こし破れに繋がってしまいます。
そういった意味でも皮革は日ごろのお手入れや保管状況に注意が必要になってきます。
皮革製品について
皮革の長所と短所について簡単に述べていきます。
長所
- 動物特有の模様(シボ)
- 風合い(肌触り・ぬめり感)
- 保温性
- 吸湿性
- 耐久性
- 難燃性
などがあげられます。
短所
- 部位により質の違いがある(均一でない)
- 濡れると型崩れや風合いの変化が生じる
- 濡れた際、熱が加わると縮み・硬貨が生じることがある
- 独特のにおいがある
- お手入れに一定の知識が必要である
など主に取り扱いに注意が必要になります。
皮革は生き物それぞれのオリジナル模様があり、その模様が銀面(表革)の風合いになります。毛穴や血管の跡・生態時のキズなど短所のようですが、本革ならではの特徴ともいえます。
また、経年使用による素材のダメージや日焼け・酸化などによる色落ちも、一般衣料ではトラブルまたは廃棄条件の一つになりますが、皮革製品の場合は、風合いとして味わい深い使用感という表現になるようです。持ち主の使用環境や保管環境により、皮革製品は様々な色合い・風合いを表す事も皮革ならではの味わいではないでしょうか?
常に綺麗な状態で使用する皮革もありますが、経年使用による変化を楽しみながら付き合っていく皮革もあります。永く付き合っていくには、日頃のお手入れにより革のコンディションを整えていく必要があります。また日本は湿度が高い為、天敵であるカビを抑制する保管方法が不可欠になります。
皮革(毛皮)アイテムは、一般衣料のように気軽にお洗濯ができる素材ではなく、ご家庭では日々のお手入れが好ましいと思われます。
一般的なお手入れは、レザー専用のオイルで皮革の潤いバランスを整える方法やサドルソープで表面の汚れを取りカビを予防する方法があります。
しかし皮革の種類や着色方法などによっては、お手入れのはずが逆にシミを作ってしまうなどのトラブルを招きかねません。また、過度なオイルでのお手入れは、たんぱく質が主成分の皮革・毛皮にとってはカビの原因にもなります。トラブルにならない為にも、皮革・毛皮の一定の知識や性質を知る事も大切です。
皮革は、人の肌とほとんど同じ成分ではありますが、人の肌のように皮革自体に治癒力がありません。一度シミになってしまうと、自然治癒で消えることはほとんどありませんので、シミを目立たなくする為のお手入れが必要になってきます。皮革もいろんな方法で製品化されていますが、染料で着色されている革ほど日焼けやしみに敏感です。
革の表面に顔料で着色されていたり、コーティングが施されている革の場合は、革表面に塗料の層が出来ていますので、シミになりにくく外的要素のトラブルには強いと思われます。
また、皮革は人を保護し寒さをしのぐといった実用的な素材でもあります。
従来の皮革は、厚く重たく、特に革衣類は女性にとってはあまり好まれない傾向にありました。
本来の役割でもある、「人を守る・寒さから守る」といったことは、ダウンやフリースなどいろんな素材が出てきたことから、必ずしも皮革の役割ではなくなってきました。皮革アイテムが本来の厚みである必要がなくなってきたともあり、皮革もファッション性に変化してきたとも言えます。
皮革が高級な素材であることに変わりはありませんが、実用性よりファッション性を重視したアイテムが増加傾向にあります。例えば、綿のジャケットに襟の一部に革が使用されていたり、バッグの底の四隅などバッグを保護する所にポイントで革が用いられるアイテムも増えてきました。時期を同じくして、デリケートな皮革製品が普及してきた時期でもあります。
また、皮革製品には顔料にて着色された皮革と染料にて着色された皮革と大きく二つに分かれます。
価格の違いもありますが、使用される上でメリットとデメリットの違いが出てきます。
顔料で着色された皮革は、女性のお化粧と同じく皮革の表面に色をのせていきます。
皮革の表面に色の膜を張る感じです。皮革ならではの模様は、ほぼ損なわれ均一な色の膜で革が覆われます。色の膜が皮革本来の通気性を妨げ皮革が短命になることもあります。色合いや風合いを好まれる方へは不向きとも言えます。
しかし、良いところもあります。
色の膜が保護役となり汚れにくく雨など水濡れに強い性質もあります。製造工程も簡単な事や生態時の傷が生じた革でも色の膜で目立たなくすることができますので比較的安価なアイテムに多く使用されています。
染料で着色された皮革は、顔料で着色された革の性質と相反すると言っていいほど違いがあります。
染料は皮革に浸透し着色されていますので、皮革の表面には塗料やコーティング剤などの保護の役割を果たす膜がない事が多く、汚れが付きやすく雨など水が浸透しシミになることがあります。しかし、染料にて着色された皮革は、革ならではの模様が生かされ、色合いや風合いがよく、まさに唯一無二の皮革製品となります。
高級なアイテムに使用されることが多い皮革です。
顔料で着色された皮革が、比較的安価なものが多い理由は他にもあります。
皮革の表面に色の膜やコーティングの膜を施しますので、皮革がどのような状態のものを使われているかわかりません。どんな動物の革なのかは判別できますが、生態時の深いキズや血管跡が多く入った部位を色の膜で目立たないよう使われている事やスエード(起毛)革を塗料やコーティング剤で表革(銀面)に似たてているものがあります。
このように顔料で着色されている皮革は、キズなどダメージの大きい皮革だったり、スエード革を加工されている皮革もあります。このような皮革は、本来の強度が保てない事もありますので使用されない部位ですが、顔料にて着色されダメージ部分を目立たなくし皮革製品として、市場に出回っています。
このような場合の見極めは難しい事もありますが、少しでも皮革の現状やメリット・デメリットを把握されることで、皮革製品を選ぶ際のお役に立てれば幸いです。
皮革の種類
生き物の皮をナメシ工程を経て製品の革になります。
主に、牛革・豚革・羊革がありますが、ナメシの技術の向上から、いろんな生き物の皮革製品が出てきました。
簡単に、哺乳類では馬革・山羊革・鹿革・カンガルー革など、爬虫類ではワニ革・トカゲ革・ヘビ革・カメ革など、魚類ではエイ革・サメ革・ウナギ革など、鳥類では、ダチョウ革など多種多様な皮革が存在するようになりました。
牛革
革素材では最も多く使用されている種類です。
ひとえに牛革といっても下記のようにいろんな牛革があります。性別・大きさ・品種などにより区別されています。
動物では、牛の革が7~8割ほどを占めます。種類も多く大きく性別や年齢により呼び名も変わってきます。また、加工がしやすく、クロコ革・象革・バファロー革などに模様を型押しされた製品もあります。
カーフスキン:生後6か月以内の仔牛の革。
キップスキン:生後6か月~2年の革。
カウハイド:生後6か月~2年の雌牛の革
ステアハイド:子牛期に去勢された雄牛の成牛革。
ブルハイド:去勢されていない雄牛の成牛革。
種類には、肉用牛、乳用牛、兼用牛など、品種以外にも種類があります。
豚革
豚は成育が早く、日本では飼育数も多い革です。しかし、それに比例してのニーズは日本では少なく、原皮あるいは革として主にヨーロッパに輸出されています。日本の豚革は品質が良いとして、高級ブランドでも多用されています。
豚革は、銀面(表面)から内部(肉面)にかけ突き抜けています。3本の毛穴が特徴です。他の革に比べ安価ですが、品質は他の動物とさほど変わりません。
羊革
柔らかく吸い付くような手触りが特徴です。大きく区分すると羊革と山羊革に分かれます。
羊革はきめが細かくデリケートで山羊革は密度が大きく羊に比べ丈夫です。暑い国で育った羊は、革表面の模様も美しく、品質の良い革とされています。
馬革
馬革は、牛や豚のように食用あるいは羊にようにウール生産などのように飼育されていないこともあり、均一に革を生産することが難しくなります。腰部から背中部にかけて繊維密度や強度が大きく、腹部は繊維密度が小さくあまり強くない革になります。部位によりかなりの違いが出てくる革となりますので、高品質な部位は希少価値もたかくなります。
コードバン(お尻の革)に限っては別です。繊維の密度も濃く強度も兼ね備えています。コードバンは馬革でも別物と考えて良いでしょう。
鹿革
柔らかく強い革です。水に比較的強く、軽い性質があります。
カンガルー革
うすくて軽く、丈夫な革です。よくサッカースパイクにも使用されています。
ワニ革
爬虫類皮革の代表的な革です。
トカゲ革
爬虫類皮革の中で、比較的メジャーな皮革です。
ヘビ革
ヘビ特有の斑紋や鱗が特徴ですが、斑紋は脱色にて消される事が増えています。
カメ革
大きなウロコ模様が特徴です。
エイ革
表面が硬い粒上の模様に覆われています。水濡れや熱にも強く、お手入れも水拭きできるほど丈夫な革です。
サメ革
水に強く、丈夫な革です。使うほどに風合いが出てきます。
ウナギ革
イールスキンとも言われます。丈夫な革ではありませんが、使うほどにつやが出て味わい深い革です。
ダチョウ革
羽を抜いた跡のクィルマークが特徴です。イミテーションの多い革でもあります。
上記のように、皮革といってもいろんな種類が存在します。綿・シルク・麻と言ったように、素材の区分で、単に皮革と区分されがちですが、生き物(牛・豚・羊など)の種類・ナメシの方法・着色方法などにより、同じ動物の革でも性質の異なる革になります。
また、鞣しかたで硬い革にも柔らかい革にも仕上げることができます。
哺乳類の革は、網様層を利用したスエード革や表革(銀面)を加工し小さく起毛させたナッパ革・銀ズリ革などもあります。
毛皮とは
毛皮の場合は、毛の根元にある「かわ」は革ではなく皮と表現します。
毛皮も人間が肉を食べた副産物でもあります。
動物を中心とした生き物の皮膚に防腐処理を施したものを原皮といいます。ここまでは皮革と同じです。
原皮をナメシ脱毛処理を行なわないものが毛皮となります。
毛皮もたんぱく質(ケラチン)が主成分ということもあり基本的に無臭です。一般的に毛皮のニオイは、このナメシ剤のニオイになります。
毛皮は生態時の毛の風合いや肌触りを出来る限り損なわないようナメシ処理をしたものです。
また毛皮の目的は、皮革のように強度や実用性というよりは、美しく仕上げるファッション性に特化しています。
すなわち、ナメシより毛さばきや染色などの工程を重視されていますので、動物の種類や年齢・性別により、多少のちがいはありますがナメシによる違いはさほど無く、共通のお手入れ方法で良いと思います。
毛皮も使用する部位により、耐久性や毛のボリュームは変わってきます。
皮革と同じく肩や背中などの皮は繊維が密であり耐久性に優れますので毛革衣類を製作する際は主に肩や背中に使用されています。
これに対し、腹部などの部位は繊維が荒く脂肪(油分)が多く含まれるため伸縮性に優れますが毛皮衣類の場合、製品化されたアイテムは毛に覆われ皮の判別が難しくなります。腹部など、油分の多い部位の毛皮は、経年変化にて油分が抜け毛抜けが生じてくることもあります。
性能としての毛皮は体を守ったり、寒い季節体温の保温効果など、人を守る素材というより、ファッション志向が強くなり美しさ・優雅さを毛皮は担っています。
毛皮の成分もタンパク質が主成分となります為、油分と水分のバランス(潤い)が大切となってきますが、皮部分のお手入れは難しく後に毛抜けのリスクや毛さばきの低下も生じかねませんので、毛皮のお手入れは基本毛の汚れ・ほこりの除去が中心となります。
毛も当然ですが皮にもストレスを与えないことが毛皮として永く使用することと考えます。
毛皮の場合は、潤いのバランスが崩れることで、毛さばきの低下や毛根部分の皮が硬くなり毛抜けが生じてくることがあります。
毛皮は一般的な洗いは出来ませんので、日ごろのお手入れや保管状況に他の素材以上の注意が必要になります。
毛の種類としては、剛毛・刺し毛・綿毛の3種類に大きく分かれます。
剛毛は、動物の口ひげや目の周りに生える硬い毛をさします。
刺し毛は、全体に生えている長い毛のことで、艶があり美しく、色彩に富んでいます。
綿毛は、刺し毛の下にある短く柔らかい毛です。毛皮の価値は、綿毛がどのくらい密集しているかによって決まることもあります。
毛皮製品
毛皮の長所と短所について簡単に述べていきます。
長所は
- 動物特有の模様
- 風合い(毛さばき)
- 保温性
- 吸湿性
などがあげられます。
短所としては
- 部位により質の違いがある(均一でない)
- 濡れると毛抜けが生じてくる
- 濡れた際、熱が加わると縮み・硬化が生じることがある
- 日焼け・酸化による色変化を生じやすい
など主に取り扱いに注意が必要になります。
衣類としての毛皮は目的の形に応じ何匹もの毛皮を接ぎ合わせられていますので、つなぎ目の糸のホツレが目立ってくることがあります。
毛皮の場合は、毛さばきや色合いが命です。
しかし、毛は素材の中で一番デリケートといっても良いくらい日焼けや酸化による色変化を生じやすい素材でもあります。暗いところで保管していても酸化により色変化する事もあります。また生きた皮膚でもないのに毛が抜けない事は不思議ではないでしょうか?
これは、毛皮が水濡れに弱いことにもつながります。毛皮が水に弱い理由には大きく2つあります。1つは毛皮の裏側は毛球(毛根)近くまで削られており毛抜けを生じないように糊で止められています。
水が浸透することで糊の力が弱まり毛抜けに繋がる事があります。
2つ目は、皮(皮膚)が水を含むことで皮が膨張し乾燥しても毛穴は元通りには引き締まりませんので毛抜けに繋がることがあります。このような理由から、毛皮は雨などによる水濡れには注意したほうが良いと思います。
また、毛皮製品は毛さばきが大切といわれるアイテムですが、購入時に気をつけることがあります。
それは、手にしたとき、毛が抜けたり・毛の根元にある皮が硬くなっていないか確認する必要があります。
店頭に並んでいるからといって製品としては新しくても毛皮が新しいとは限りません。商品として新しいものでも使われている毛皮は古いこともありますので、毛が抜けないか・皮が柔らかいかといったチェックは購入時に大切になってきます。
最近の毛皮の使用方法は、フード周りや前身ごろなどへワンポイントとして使用されることが増えてきましたが、毛皮への見極めは必要と思います。
上記で述べましたように、毛皮は毛抜けを防ぐ意味で毛根部分の皮に糊付け加工をされていることから水洗いを嫌います。したがいまして、カビが生じてしまうと完全に除去する事が難しい素材でもあります。
十分な水洗いが出来ないからです。このように保管が難しくデリケートな素材であり高価なものでもある為、日ごろのお手入れで、ホコリをこまめに除去することでシミやカビを防ぐ対策になります。
もし、カビが発生した場合などは専門業者へ依頼された方が良いでしょう。
毛皮の種類
毛皮の種類にも、毛さばきが良く艶があり美しいものから、実用的なものまで幅広くあります。
ここでは、一般的に認知度が高い毛皮を紹介していきます。
- セーブル…
- チンチラ…
- ミンク…
- キツネ(FOX)…
- アストラカン…
- タヌキ…
- ムートン…
- うさぎ…
毛は刺し毛と綿毛で構成され、長く密集しており光沢も十分です。毛皮の最高峰とも言われ、ミンクの5倍~10倍ほどの価格です。
生産量が極めて少なく、希少価値のある毛です。一見、ラビット(うさぎ)に似ていますが、チンチラ特有のヌメリ感があります。
毛の艶が美しく、軽い割には丈夫です。色も豊富なことから毛皮のリスクが一番少ない毛皮でもあります。中でも、ベビーミンクはミンクでも最良品とされています。ミンクも刺し毛と綿毛があり、綿毛の密集度も品質に関係しますが、刺し毛も艶、均一に密集しているかにより評価が決まります。
以前はキツネと呼ぶことが多かったのですが、最近はFOX(フォックス)と呼ばれることのほうが多く、品質タグにもFOXあるいはフォックスと表示されています。世界中に生息していますので生産量も豊富です。毛足も長く、シルクのような肌ざわり感があります。
羊の胎児の毛皮になります。毛は縮れているようなカールがあります。色は黒色で毛・皮ともに柔らかく光沢があります。
毛は黄褐色で斑がある。刺し毛は艶があまり無く毛先になるにつれ黒色になります。通常、ラクーンとも言われることがあります。
成羊の毛皮です。主に敷物が多く、毛を整えジャケットやジャンパー・コートなどにも使用されている。
ラビットとも呼ばれている。毛は白色か茶色が多く、柔らかくふわふわ感があります。毛がデリケートで折れやすく、皮が薄く弱いため毛抜けが生じやすい毛皮でもあります。
毛皮を使用・維持するにあたり注意すること
毛抜け・虫食い
毛抜け原因の一番は消費者の保管ミスによる虫食いです。
毛皮を喰う虫は数多く、代表的なものとしてヒメマルカツオブシ虫・ヒメカツオブシ虫、またイガ・コイガ等があげられます。
ほとんどが春に産卵し、10日後に孵化した幼虫が夏にかけての間に毛の根元の部分を喰べますが、カツオブシ虫は毛よりも皮を喰べます。また、虫の種類によっては、毛抜けのように刺毛、綿毛ともに毛の根元が喰われ、ゴソッと脱毛状態になり、その部分は毛根が残り、虫の糞などの残留物があるのが特徴です。
毛皮の理想的な保管条件は湿度50%、温度15℃以下です。防虫剤を使用する場合は、カシミア、毛皮等専用のものをお奨めします。
自然劣化
毛皮も他の衣類と同様に着用頻度に関わらず、経年にしたがって痛んできます。古い毛皮の場合、経年変化を起こし毛根がゆるんでくるため、毛が抜けやすくなります。
着用によるスレ
毛皮の場合、着用による摩擦が重なり毛がすり切れ、その部分だけ毛が薄くなることがあります。特に摩擦が起きやすいのは、袖口、ポケット口、前立ての部分で、刺毛が折れたり切れたりして無くなっていきます。
ショルダーバッグを肩からかけた時も同様で、ベルトがあたる肩のあたりの毛やバッグ本体があたるところが擦れてしまいます。
硬化・破れ
水濡れ
毛皮は水が苦手なため、何かの理由で大量の水が皮部分に及ぶと硬化して、破れやすくなります。雨などで濡れた場合は、水分をタオルなどでよく拭き取りゆっくりと自然乾燥してください。
ストーブなどの強い熱で直接乾かすと毛先がチリチリになったり、皮が硬化して症状が進むと破けの原因となります。
裏地のアイロン
裏地にアイロンをかけるのは禁物です。裏地から皮部に熱が加わると熱収縮を起こして硬化、破れの原因になります。
自然劣化
製品化された毛皮は年月を経ると、皮にもともとあった油質が酸化したり、なめし剤の酸が濃縮されて皮に影響を与え、硬化、破れの原因になる場合があります。
変色
日光・蛍光灯による変色
白い衣類が黄ばんでくるように、毛皮も光線によって変色・褪色していきます。なかでも、淡い色の毛皮は特に可能性が多く扱いに注意が必要です。
毛皮を何年も同じ色合いのまま変わらないと考えるのではなく、経年変化により自然劣化が生じてきます。
異臭
汚れやホコリをそのままにしておいたり、高温、多湿下の保存はカビを発生させてしまうと、悪臭の原因となります。カビの場合毛皮製品は水洗いが難しい為、毛皮クリーニングでの根本的な解決は難しくなります。また、カビを除去できたとしても、毛や裏地にカビ跡としてシミ状に残ることもあります。
したがって、オフシーズンの保管が重要となり、温度・湿度の管理が重要となります。
人工皮革とは
基材となる布地などに、合成樹脂を浸み込ませコーティングを施し、表面に型押し等の加工をして外観や触感を皮革調にした製品になります。
皮革の主成分はタンパク質であるのに対し人工皮革の主成分は樹脂・不織布となります。
樹脂にもいろいろな種類があり、ポリウレタンやポリ塩化ビニルなどあります。
ポリ塩化ビニル樹脂とポリウレタン系樹脂との区別は困難とされています。技術の発達によって同じ人工皮革のように見えても、性質は異なります。
人工皮革は革に比べ安価で軽く水に強い性質を持っています。また、汚れにくいのでお手入れの手間があまりかからず、汚れても水拭きや中性洗剤をぬるま湯で薄めて拭き取ることができるのでメンテナンスが簡単です。
本革ではカビが発生する心配があるため湿気には注意しておかなければなりませんが、人工皮革は皮革よりはカビの心配はありません。
加工がしやすい素材でもあり色やデザインのバリエーションが豊富です。
通気性は必要無く、肌に接するところが汗でベッタリと張り付くような肌触り感があります。引っ張りの強さや伸縮性は、不織布(基布)の性質次第といって良いでしょう。
塩化ビニル系は、可塑剤(柔軟剤)を混ぜて柔らかく作られており、経年使用による劣化やクリーニングによる硬くなったりもろくなったりと変化しやすい。ナイロン系は、塩化ビニル系と開発時期も性質も似ており、その後ウレタン系が開発されたことにより、市場にはあまり出回らない素材でした。ちなみにナイロンは商品名であります。
ウレタン系は、塩化ビニルやナイロンのように可塑剤(柔軟剤)を必要としません。したがいましてドライクリーニングも可能ですし、耐熱性や耐摩耗性がありアイロンもかけられるため、人工皮革として、もっともリスクの少ない製品です。そのため、バッグや履物、ソファーなどにも多く利用されています。
皮革と人工皮革
本革に比べ比較的安価な人工皮革が多様化されてきました。
有名ブランドの靴やバッグなど、いろんなアイテムに使われるようになりました。
今までの人工皮革は、完成度も低く見分けは容易でしたが最近は質も向上し、本革と見分けがつかない物も出てきています。したがって、本革と思って、人工皮革を購入してしまった。という例も少なくありません。そこで、皮革と人工皮革の見分け方について簡単にご紹介していきます。
①断面
革衣類の場合袖口やスソなど、バッグなどの小物の場合ファスナー付近などの折り返し部分で断面が確認できるところを探してください。人工皮革の場合表面の反対側には生地(不織布)などが使用されています。
皮革の場合は、表面が表革(銀面)の場合、裏はスエード(起毛)革といったように繊維の層があります。
②伸縮性
皮革は一定方向に限られ伸びるのに対し、人工皮革は縦横無尽に伸縮性があります。
しかし、最近の人工皮革はその性能も改善され、皮革のように一定方向の性質を持たせたものもあるります。
伸縮性だけで、本物か偽物かを見分けることには慎重さが求められます。
③肌触り
感覚的なものになりますが、皮革に触れた場合しっとりと吸い付くような肌触りに対し、
人工皮革は汗などの水分を吸収しないため手のひらをあてると汗ばむようなベタベタ感が残ります。
④荷重
人工皮革は、皮革より軽いものが多く、皮革の割合に対しての重さの感覚を把握されていると皮革か人工皮革かわからないアイテムでも、持ったときの重さで判断できるものがあります。
⑤表示
ラベル、品質表示、レザーマークの有無など衣類の内側についているタグで確認できます。まれに、タグのないアイテムもあります。その場合は、購入を控えるのも判断の1つです。
⑥見た目
本革は動物の生体時の傷やシワなどによる不規則性があり一様ではありません。人工皮革は全体に均一なものが多く、シボ(模様)も繰り返されていることがあります。
本革と人工皮革は見た目の違いはほとんどありませんが、性質は全く違う素材です。
本物とコピー商品の見分け方
以前のコピー商品は粗悪なものが多く比較的簡単に見分けができました。
最近はスーパーコピーと称されるほど完成度が高く見分けがつきにくい物が増えてきました。
本物かコピー(偽物)かを見分けるには、購入したいブランドを直営店で良く見て感覚をつかむ事が大切ですが、日常生活の中では難しいことでもあります。
近年はインターネットやアウトレットで簡単に購入することが出来ますので、間違ってコピー商品を買ってしまったケースが後を絶ちません。そういった事からも本物を確実に購入されたい方へは、インターナットやアウトレットでの購入でなく直営店(実店舗)での購入をお勧めしています。
購入後、後悔する事がないよう、一般的に公表されている本物とコピーアイテムの違いや私どもオリジナルの見分け方をお伝えしていきたいと思います。
ニオイ
本物とコピー商品の見分け方で、ニオイも1つの手段です。目で確認が難しい内部に使用されている芯の素材や糊までコピーされている事は少なく意外に違いがわかります。各ブランドもオリジナルの芯・糊を使用されていますのでそれぞれのニオイがあり違いがあります。
金具
金具にはロゴやマークが施されていますが、つぶれている文字があったりバランスが悪いなど、仕上がりにむらがあります。本物は、文字がつぶれたりすることなくしっかり刻印されています。
ファスナー
各ブランドも特定のファスナーメーカーがあります。コピー商品との比較になります。しかし、年代により各ブランドが使用するファスナーメーカーも変わっています。
シリアルNo
基本的にはどのブランドもシリアルNOがあります。
シリアルNOの場所はブランドによって変わりますが、比較的判りづらいところにあるようです。
コピー商品の中にはシリアルNOも付けている商品もあり、シリアルNOに記載されている番号やアルファベットで製造された場所や時期が暗号化されたように並んでいます。従いまして、お好みのブランドが有りましたら、シリアルNOの意味を理解されていたほうが良いと思います。
ステッチ
ステッチラインが曲がっていたり、ブランドによってステッチ幅(ピッチ)が決まっていたりします。また、コピーは真っ直ぐにステッチが入っており本物は少し斜めにステッチが入っているものもあります。ブランドにより微妙に変わります。
タグ
商品には必ずタグがついています。まだ全てのブランドでの対応ではありませんが、目では確認が難しいくらい小さな文字がタグの中にあります。一般的にはマイクロタグと呼んでいます。
荷重
長年ブランド品を手にしてきて、私どもが1番に行う判別方法はアイテムの重さです。革・キャンパス地・ファスナー・金具・裏地などバッグのトータルの重さがブランドごとに癖があります。
バッグを例に挙げましたが、財布やジャケットなどいろんなアイテムにいえるようです。一概には言えませんが、同じデザインのバッグを本物とコピーで比べるとコピーの方が軽いようです。
革衣類
高級革衣類には、ファッション性が求められ見た目も重視された革が多く使用されています。薄く軽いこともあり山羊革や羊革が多様されています。さらに希少な子羊の革を使用されているアイテムもあります。
実用性の高いもとして多いのがバイク用です。年々需要は低下していますが、体を守るジャンパーとして厚めの牛革であったり、馬革のコードバンを使用されているジャンパーもあります。
しかし、ここで注意しておかないことがいくつかあると考えています。
①極端に薄い革
ベビーラムなど元々薄い革である場合を除き、最近の皮革衣類は極端に薄く削ってあり出来る限り軽く作られているものが増えています。軽く使い勝手は良いのですが、デリケートになりますので破れやすいなどのリスクがあります。
②シワの多い革
購入時にはなかなか判別は難しいですが、シワの多い革は主に腹部の革になります。着用時にもシワは出来ますが、経年使用により革が水分を吸収・放出を繰り返し油分が少しずつ減っていくことで生態時のシワが鮮明になってきます。
シワは人の肌と同じく一度生じると元通りに戻すことはできません。
革は、鞣しの際、生態時のシワを伸ばし加工されていることから、新品(購入時)の時はシワを伸ばし加工されている為、わからないことがあります。
確認が出来る場合は、出来る限り負荷が求められる部位に腹部の革が使用されていないアイテムの購入が良いと思われます。
③硬い革
コードバンのような特殊な革は、その性質から元々硬い革ですが、通常は生態時の柔らかさとさほど変化はないようです。
商品を見たときに柔らかそうな革なのに、実際触ってみたら硬い革であった時など、違和感を生じた際は購入を控えたほうが良いかもしれません。
また、販売される方は入荷時にチェック、あるいは販売される際お客様へのアドバイスが必要になりますため、事前に販売元へ説明を求められても良いと思います。
④革製品特有のニオイ
皮革は主成分がたんぱく質であり無臭です。そのため革のニオイとはナメシ剤のニオイを指します。
しかし、腐食臭や耐え難いニオイは、なめし不足により革自体が腐食を始めている際に生じるニオイと思われます。このような場合、購入は控えたほうが良いと思います。
⑤色止めが十分施されていない革
私どもでは染色堅牢度とも呼びますが、染料にて色付けされその後色止めが十分に施してない皮革アイテムが増えているようです。
色止めをされていないブランドやメーカーへ問い合わせを行っていますが、ほとんどの回答は、「色止めをすると、色にクスミが生じ色の奥行きが妨げられる」といった内容のものが多くあります。
したがいまして、今後も出てくると思われます。色止めが行われていない場合、インナー衣類やバッグに色移り等のリスクが生じやすく注意が必要です。
バッグ・財布
バッグ・財布は、多種多様な素材を使用されています。
しかし、革とキャンパス地・革とナイロン地、など複数の素材を使用されている場合にトラブルが多いようです。雨に濡れて革からキャンパス地に色が出たり、外は革を使用されて内側は人工皮革を使用されているアイテムは、保管の状態によりますが3年から5年ほどでベタ付きや白い粉が生じてくる事(人工劣化)もあります。
また、経年使用による症状の中でも多いのは、皮脂や汗による持ち手の黒ずみや底の四隅のキズ・色落ち、財布はキワのキズなどが生じてきます。
特に、最近のアイテムは実用性よりファッション性に特化してきております。メーカーサイドもファッション性を重視することにより、購入後に色が変化してきたりシミが簡単に付いたことでのクレームが増加の傾向です。
お客様はデザインで選ばれますが、それぞれのアイテムのリスクを含む説明が販売時には必要と思われます。
革靴
靴を履く一番の理由は、足の保護になります。しかし、足の形や大きさがフィットしたものでなければ、足を保護するどころか健康被害が出てくることもあり、足は体全体に影響を与えてしまう為、選ぶ際、もしくはお勧めする際は十分に注意が必要になります。
靴はくるぶしより下までの靴をシューズ、くるぶしより上のものをブーツと区分されます。靴は、甲の部分がどんな種類の素材を使用されるかにより、革靴・人工皮革の靴あるいは布靴などに区分されます。また、性別や年齢による区分や用途に応じた区分があります。
革靴は、革に通気性があることから蒸れにくい履物でした。しかし、最近の革靴はデザイン・色合い・革表面への加工が施されている革靴が多く蒸れやすくなっています。
靴の構想を大まかに5つに分けて説明していきます。
①甲
靴の種類や商品の価値を決める重要な部分です。甲部分の材料は水分(汗や湿気)の吸収や放出が求められます。
靴を履いたとき足から発生する水分を吸収して膨張し、ぬいでいる時に水分を放出し収縮しますので、大きな型崩れは防ぐことができます。
②裏
裏は甲と組み合わせて使用されますので、甲の欠陥をある程度補うことができます。甲に蒸れやすい人工皮革を使用されている場合、厚い裏革を使用すれば蒸れは防ぐことができます。
③中底
中底は靴の中心的な役割です。足の裏は中底に接するため、堅牢度(色止め)の高いことが求められます。裏も中底も内側の素材ですので、足の水分を多く吸収する素材が求められます。
したがいまして、いろんな役割の素材が使用されることから、軽い靴が良いとは一概には言えません。
④中敷
中底の上、主に足裏のカカトから土踏まずくらいまでに革あるいは人工皮革を張りつけたものです。
ほとんどは、マークやブランド名が記されています。この部分に使用されている素材は、足裏の肌に接する事もあることから、人工皮革ではなく水分の吸収と放出に優れた革が良いと思われます。
⑤表底
地面と接するところでです。中底と併せて足裏を保護し、衝撃から足を守る役割があります。素材には、タンニン革・塩化ビニル樹脂・ウレタン樹脂などがあります。